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  • STRショッピングの思い出
2021年1月6日、日本ウォーゲーム界に多大な貢献をされた鈴木銀一郎氏が永眠されました。

鈴木氏──以下、親しみを込めて「大佐」と呼ばせていただきます──は有限会社翔企画を設立し、シミュレイターを新創刊しました。同時にスタートしたのが「STRショッピング」という通販サービスです。

▲シミュレイター第1号より

1980年代のことです。メーカー→一次問屋→二次問屋→小売店という流通が当たり前の時代に、メーカーが直販をするのは問屋も小売りもいい顔をするはずがありません。しかし大佐は、地方のゲーマーが「欲しいゲームが手に入らない」状態を何とかしようと、STRショッピングを始められました。

「どの会社のどんなゲームでも」通販で扱えたのは、ウォーゲームの流通を支えた問屋(ミムラ、後の東京ミムラ)の協力が大でした。

私も、その前に入社していた藤浪智之氏も、シミュレイターの編集作業の傍らで、STRショッピングの商品梱包や発送を行っていました。新入社員の登竜門です。「どの会社のどんなゲームでも」と謳っている割に倉庫があったわけではありません──注文があれば問屋に取りに行き、事務所に戻ってから梱包し、発送していました。「送料無料」と大盤振る舞いですが、人件費を考えると赤字だったでしょう。正直に言えば私も辛かったですし(徹夜仕事もざらだった時代です)、編集に追われて発送業務が滞って「それなら私がやる」と大佐を怒らせてしまったこともあります。

通販を手がけるショップが増えたためにSTRショッピングは最終的に自社商品だけの扱いに縮小しましたが、困難を伴う通販事業を続けたのは、「ウォーゲームの火を絶やさない」という大佐の強い想いがあったからです。またもちろんアンテナ・ショップとしても機能するので、どんな商品が売れ筋なのか、皮膚感覚でトレンドを知る上でも重要でしたが(大佐は奥野かるた店で実地調査もされていました)。

あれから約30年、市場は小さくなりましたがショップも通販の仕組みも充実しており、「欲しいゲームが手に入らない」時代ではなくなりました。様々なツールの進化で言語の障壁も小さくなりつつあります。それでも世界にはまだまだ知らないウォーゲームであふれており、その中には面白い(面白そうな)作品も多々あります。大佐の信念には遠く及びませんが、今後もそうした作品を紹介し続けていきたいと思っています。
(中黒 靖)